研究概要 |
1.Haloferax volcaniiのP-糖タンパク(P-gp)類似薬剤排出タンパクは脂溶性陰イオンである脱共役剤(FCCP)やベンジルペニシリンをも輸送基質とすることを明らかにした。他方、動物細胞に発現しているP-gpは脂溶性陽イオンを輸送基質とする。バクテリアの薬剤排出輸送体の輸送基質はP-gpのそれとよく類似しているが、特異性は低いと思われる。 2.薬剤排出タンパクの発現が低いレベルである野生株を、高濃度のグルコース、グルコサミン、アミノ酸、アルコール等の存在下で培養すると、薬剤排出タンパクが高レベルに発現してくることを発見した。代謝されない糖である2-デオキシ-グルコースや3-◯-メチル-グルコースではこの効果がないので、これらの栄養物の代謝物が排出タンパクの発現ないしは活性化を行うと推察した。 3.薬剤排出タンパクを発現している大腸菌変異株を得取した。その輸送基質のスペクトラムは、高度好塩菌やP-gpとは異なっていた。 4.Enterococcus hirae(Streptococcus faecalis)に存在する薬物排出輸送体は、ATPの存在が不可欠であることを証明した。おそらくは、ATPの加水分解をエネルギー源としていると推測された。また、H^+-ATPaseの阻害剤や脱共役剤をも輸送基質にすることを発現した。 5.Corynebacterium glutamicumからも薬剤排出輸送担体を発現する変異株を単離することが出来た。この輸送担体の基質は、H.volcanii,E coli,E hiraeのそれとは大きく異なっていた。 6.Haloferax volcaniiのグルコース輸送が細菌では珍しいNaとの共輸送であることを我々は前に発見していたが、今年度、フルクトース輸送もNaとの共輸送であることを示した。
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