研究課題/領域番号 |
04452305
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
辻 彰 金沢大学, 薬学部, 教授 (10019664)
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研究分担者 |
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学部, 助手 (20155237)
寺崎 哲也 金沢大学, 薬学部, 助教授 (60155463)
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キーワード | 培養細胞 / Caco-2 / モノカルボン酸 / プロトン共輸送 / 内皮細胞 / 血液脳関門 / P糖蛋白質 / ビンクリスチン |
研究概要 |
本研究は、薬物の組織細胞膜輸送研究における培養細胞系の有用性を確立することを目的とする。まず、1.従来薬物腸管吸収に適用される「pH分配仮説」に対し、申請者らがすでに小腸刷子縁膜小胞によるモノカルボン酸系薬物輸送研究において提唱した「プロトンとの共輸送あるいは重炭酸イオンとのpH依存的交換輸送による二次性能動輸送」仮説を、ヒト結腸由来上皮細胞培養系(Caco-2)を用いて実証する実験を行った。また、2.脳毛細血管内皮細胞luminal側に存在する「P-糖蛋白質(P-gp)が血液脳関門において排出ポンプとして機能する」という、申請者らの仮説を初代培養ウシ脳毛細血管内皮細胞系を用いて実証する実験を行った。その結果得られた成果は、次の1及び2に示す通りである。 1.Caco-2培養細胞において安息香酸の輸送特性が刷子縁膜小胞系で得られた現象と同様であり、その輸送速度は蛋白質修飾剤及びプロテアーゼ処理によって著しく減少した。このことより、安息香酸のpH依存的輸送は、pH分配仮説に従う拡散輸送よりは、プロトンとの共輸送担体を介した能動輸送に基づくものであり、これに関与する輸送系はモノカルボン酸構造を有する化合物にのみ親和性があることが明らかとなった。 2.ウシ脳大脳皮質切片及びその初代培養細胞いずれにおいても、組織免疫学的手法により内皮細胞血管側にP-gpが局在することが確認できた。[^3H]ビンクリスチンの血管側からの細胞内への取り込みは種々のP-gp機能阻害剤やモノクロナール抗体MRK16処理により増加し、[^3H]ビンクリスチンの見かけの取り込みの増加はその細胞外へのefflux過程の阻害に基づくことが明らかとなった。この結果は、物質の中枢移行性が化合物の物理化学的因子によって制限されているばかりでなく、P-gpによる汲み出しに働く担体輸送系によっても制限されるという、血液脳関門の新しい概念を提示するものである。
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