ICRF速波のモード変換による電子加熱と電位形成

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04452312
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 八坂 保能 京都大学, 工学部, 助教授 (30109037)
• 研究分担者: 久保 寔 京都大学, 工学部, 助手 (80089127)
• キーワード: タンデムミラー / ICRF波 / 軸方向電位形成 / 軸方向閉じ込め / 速度空間拡散 / 径方向閉じ込め / 高ベータ

研究概要

HIEIタンデムミラーにおいて、新たにセントラルセルにイオン閉じ込め電位形成用ICRF波(1.5MHz)を入射し、その効果を調べた。前年度の研究により、プラグセルに伝搬してきたICRF速波が強磁場側からイオン-イオン混成共鳴層に入射することによって、静電波にモード変換することが明らかとなっている。今年度は、新設されたICRF速波の入射に伴って、閉じ込め電位(約70V)の形成が端損失イオンエネルギー分析器による測定で確認された。このとき、軸方向閉じ込めの改善が端損失イオンの減少により確認され、軸方向粒子閉じ込め時間は3〜4倍長くなったと見積られる。これによって、セントラルセルで密度の上昇が観測された。分光測定の結果より、プラグセルでの電子温度について約2倍の上昇が確認された。閉じ込め電位の形成機構は、電子温度との関係より、ICRF波による電子の速度空間拡散によるものと推測される。
上記のような軸方向の閉じ込め改善と、昨年度の成果によるリミタバイアスによる径方向の閉じ込め改善(Physical Review Lettersに掲載(Vol.70(1993)pp.4071-4074))を同時に行なった結果、ベータ値にして約14%の高温・高密度プラズマ(イオン温度:0.1keV、密度:10^<13>cm^<-3>)が生成された。このとき、系全体のエネルギー閉じ込め時間が約4倍となり、軸方向および径方向のエネルギー閉じ込め時間がそれぞれ3.8倍、4倍となっていることがわかり、高温、高密度プラズマの生成は系全体での閉じ込めが改善された結果であることがわかった。このような高ベータプラズマは、伝搬ICRF波電界の動重力により安定性が保たれていることが確認された。
以上により、ICRF速波のモード変換による電子加熱と電位形成が、タンデムミラーの閉じ込め改善に対して有効であることが示された。

研究成果

• [文献書誌] O.Sakai: "High Radial Confinement Mode Induced by dc Limiter Biasing in the HIEI Tandem Mirror" Physical Review Letters. 70. 4071-4074 (1993)
• [文献書誌] O.Sakai: "Improved Radial Confinement Obtained by dc Limiter Biasing in HIEI" Proc.Int'l.Conference on Open Plasma Systems for Fusion,(Novosibirsk,1993). (1993)
• [文献書誌] Y.Yasaka: "Heating and Potential Formation Using Mode Conversion of ICRF Waves in HIEI" Proc.Int'l.Conference on Open Plasma Systems for Fusion,(Novosibirsk,1993). (1993)
• [文献書誌] M.Inutake: "Confinement Scaling,Heating and Stability in the GAMMA 10 and HIEI Tandem Mirrors" Proc.14th Int'l.Conference on Plasma Physics and Controlled Nuclear Fusion Research,(Wurzburg,1992). 2. 651-658 (1993)
• [文献書誌] 八坂保能: "HIEIにおける電位と輸送の制御" Research Report of National Institute for Fusion Science NIFS-MEMO. 9. 32-39 (1993)