南極ボストーク基地で堀削された氷床コアに含まれるクラスレート水和物について、以下の新たな知見を得た。 1. 氷床コアに含まれるクラスレート水和物の解析 (1)X線構造解析:比較的大きなクラスレート水和物について、X線四軸自動回折計による構造解析を行った。グリーンランド・ダイスリー基地で堀削されたコア中のクラスレート水和物とは明らかに違うデータが得られており、現在その相違の原因について検討を進めている。微少なクラスレート水和物については、高エネルギー物理学研究所の放射光実験施設で、その分布を非破壊的に検出することに成功した。さらに、効率的な方法を検討中である。 (2)レーザラマン測定:クラスレート水和物中のN_2とO_2については、その伸縮モードを検出し、深さ依存性を調ベている。CO_2については、まだ検出に成功していない。赤外分光を並用して、検出方法を検討している。 (3)光学顕微鏡観察:クラスレート水和物の平均体積が、水素同位体組成と極めて良い相関関係にあることを見い出した。すなわち、水和物の平均体積は、氷床表面温度の新たな指標になり得ることが明らかになった。 2. X線回折によるクラスレート水和物の生成過程の観察:高圧セルに氷の粉末を入れ、CO_2気体で加圧することによって、クラスレート水和物を生成し、その生成速度をX線回折で測定可能であることを確認した。この測定は、北大に既設の透過能に秀れた高エネルギーX線発生装置がなければ不可能であることも明らかになった。 3. 氷床におけるクラスレート水和物の生成過程について理論的検討を行い、氷床中における分子拡散が重要であることを明らかにした。
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