ゼオライトの諸特性は一般に結晶構造を有すことに由来する。しかし、その活性が微視的には骨格内のSi、Alなどの配置の乱れあるいは酸素の欠陥構造に依存する例が数多く知られている。本研究では、ゼオライト結晶を構成する各原子の規則性からのずれと活性発現機構との相関性を解明することを目的とした。 主としてホ-ジャサイト型ゼオライトのSi/Al比を種々の手法で変化させ、それに伴う構造および活性変化をIR、NMR、熱量測定、フッ素化および骨格酸素交換反応により解析した。処理には、四塩化珪素、EDTA、珪フッ化アンモニウム、水熱、および酸処理を用いた。これらの処理による結晶構造の変化は単位胞の変化として観察されるが、結晶度は処理の度合いにより一部低下した。IRによる水酸基の伸縮振動領域観察によると、脱Alに続いてSi挿入が起こらないと「ヒドロキシネスト」と呼ばれる4つの水酸基からなる欠陥サイトが生成する。しかし、その反応性は低い。フッ素化は不整の無いゼオライトでは殆ど進行せず、処理により生じる末端非酸性水酸基のみが反応する。適度なフッ素化を行うと残留隣接水酸基がフッ素の高い電気陰性度により水素原子近傍の電子密度が低下して酸性点になる。^<18>0を含む二酸化炭素による骨格酸素の交換反応性を調べると、フッ素化サイト隣接の水酸基および元々ある酸性水酸基の酸素は反応性が高いことがわかった。水熱および酸処理などにより脱Alした試料については、その進行に伴いゼオライト構造は保持されても微細孔の連結によるメソ孔の生成が示唆される。一方、脱Alと同時にSi置換を行う処理では二次細孔の生成は僅かであり、結晶および骨格構造共に保持されることが示される。 本来結晶であるゼオライトに不整・欠陥構造を導入することにより、その活性および反応性が著しく影響されることが明らかになった。
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