研究概要 |
平成4年度において,正反射および垂直入射透過スペクトルを色収差なしで測定できる偏光赤外顕微鏡を,本補助金を用いて購入した。この偏光赤外顕微鏡を,既存のフーリエ変換赤外分光光度計に接続し,微小単結晶試料について,偏光赤外反射もしくは透過スペクトルを,700cm^<-1>〜7800cm^<-1>の波数範囲において,室温で測定できるようにした。組み上げた顕微光学系の性能を検査するために,今回購入した赤外顕微鏡を用いて測定したBEDT-TTF系有機超伝導体の偏光赤外スペクトルを,パーキン・エルマー社製フーリエ変換赤外分光光度計にスペクトラテック社製偏光赤外顕微鏡を組み合わせた別の顕微光学系を用いて以前測定したスペクトルと比較した。両スペクトルは実質的に一致しており大きな問題はなかったが,今回組み立てた光学系は,干渉計の問題によって生じる,本来存在しない幅広いピークが5000cm^<-1>付近に観測されることがあった。この問題は光学系を改善することによって解消したが,問題解決に少し時間を要した。未だ数が極めて限られている有機磁性体における,顕微偏光赤外分光法を用いた,電子ー分子振動結合の研究には,新しい有機磁性体の探索が不可欠である。本研究代表者は,新しい有機磁性体として3-キノリルニトロニルニトロキシドを磁性測定により見いだし,単結晶を育成して結晶構造解析を行なった。また他の研究者によって同時期に報告された新しい有機磁性体のうち,いくつかのニトロニルニトロキシド誘導体の単結晶も育成した。これらの有機磁性体単結晶について,室温における偏光赤外反射スペクトルの測定を開始した。電子ー分子振動結合の解析には,ラマン散乱スペクトルの測定が必要なので,その測定を計画している。有機導体および有機超伝導体についても,室温における単結晶偏光反射スペクトルの測定を行った。
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