平成5年度においては、液体ヘリウム流通型の温度可変光学測定用クライオスタットを、本補助金を用いて購入した。このクライオスタットを、平成4年度本補助金を用いて購入した偏光赤外顕微鏡に接続し、微小単結晶試料について、偏光赤外反射もしくは透過スペクトルを、700cm^<-1>から7800cm^<-1>の波数範囲において、20Kから300Kの温度領域で測定できるようにした。反射および透過スペクトル測定用光学系を容易に転換出来るようにするため、カセグレン型反射対物レンズを試料の上下に設置したので、クライオスタットの顕微鏡挿入部の寸法が制限され、この部分の設計製作に時間を要した。有機磁性体における電子-分子振動結合の研究には単結晶試料が不可欠である。本研究代表者は、分子間強磁性相互作用を示す。ニトロニルニトロキシドの3-キノリル、p-ピリジル、p-ニトロフェニル各誘導体単結晶を育成し、偏光赤外反射スペクトルを測定した。また、分子間磁気相互作用に対する水素結合の影響を調べる目的で、水酸基およびカルボキシル基を含むニトロニルニトロキシド誘導体を新たに合成し、磁気測定を行なった。今後、一部の化合物について結晶構造解析を行なった後に、単結晶を用いて光学測定を行なう予定である。有機導体については、京大理の斉藤軍治教授との共同研究により、導電性BEDT-TTF陽イオンラジカル塩の単結晶について、偏光赤外反射スペクトルの測定を行なった。導電性と磁性を兼ね備えた有機化合物を得て、その化合物における電子-分子振動結合を研究する目的で、BEDT-TTFと水酸基およびカルボキシド基を含むニトロニルニトロキシド誘導体のラジカル塩の合成を試みた。
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