研究概要 |
二次元広幅スペクトルの測定のために、現有のNMRシステムに変更を加えた。この実験を行うには、高周波電力が不足であるため、高周波電力増幅器は今回申請のものを用いた。プローブは自作し、回転軸はスイッチング可能とした。また解析のための二次元広幅スペクトルのシミュレーションプログラムを開発した。 異なる位置にある二つの^<13>Cの化学シフトテンソルとそれらの間の双極子相互作用による二次元広幅スペクトルの測定法を開発した。オフマジック角度の試料回転の下で、発展区間と観測区間の間に設けた混合区間において、スピン拡散により両スピンのスペクトルを関連づけた。メチン炭素およびカルボキシル炭素を選択的に10%ダブルエンリッチしたDL-マンデル酸を試料とし、実験とシミュレーションにより、カルボニルおよびメチルの^<13>Cの化学シフトテンソルの主値および主軸方向、さらに炭素核の結合距離および結合核を次のように求めた。カルボキシル炭素の化学シフトテンソルの主値は(262.0,162.7,106.9ppm)であり主軸方向は3軸がCOOH面に対して垂直、2軸はほぼC=O結合方向に一致する。また、メチン炭素に対しては主値が(87.0,75.9,58.8ppm)であり、主軸方向は1軸がC-C結合方向である。またC-C核間距離は1.53±0.01Aと求められた。 スペクトルのシミュレーションには、ハミルトニアンH(t)を対角化してプロパゲーターU(t)を求め、それを用いて計算したFIDをフーリ工変換することにより、様なパルス(有限パルス幅効果を含む)の系列のもとでの、1次元あるいは2次元NMR/同種核あるいは異種核スピン系/静止(粉末or単結晶)試料あるいは回転試料のスペクトルおよび磁化の振る舞いを近似理論を用いずに計算するプログラムを開発した。
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