研究概要 |
本年度は,これまでの拡張ヒュッケル法やCNDO/2法などの分子軌道法と理論的重合法との結合が支障なくおこなえた成果をふまえて,この理論的重合法と計算精度や信頼度が桁違いによりAb initio法や密度汎関数法との結合を試みた。すなわち,Ab initio法では基底関数としてSTO-3Gを用い,(H_2O)_n,(HF)_n,(HCONH_2)_n等の多水素結合系に対して,理論的重合法による計算をおこない,通常のGaussian70 プログラムパッケージによる計算と比較した。その結果,両者の一致は極めて良好で,Ab initio法の近似のレベルでも,理論的重合法が計算精度の高い結果を与えることが明らかになった。なお,両者の計算時間を比較したところ,理論的重合法の方が桁違いに計算時間が短かく,しかもその優位さは高分子鎖が長くなればなるほど大きくなった。 次々に,この理論的重合法を,近年結晶表面や固体のみならず分子にも広く用いられている密度汎関数法との結合も試みた。この密度汎関数法のプログラムはDe Monを用いている。また,計算にはSTO-3Gのみならず,Split-valenceの基底も用い,さらに局所密度近似と一部に非局所の効果も含めた計算をおこなった。計算したのは,やはり多水素結合系等で,(H_2)_n,(H_2O)_nや(HCONH)_2などである。通常の方法と理論的重合法の一致はこの場合も極めて良好であった。さらに,計算時間の面でも,理論的重合法が断然有利であった。すなわち,理論的重合法では計算時間は,ほぼ高分子鎖の長さに比例するのに対して,通常の方法では指数関数的に増大することが明らかになった。 以上,理論的重合法は,Ab initio法や密度汎関数法のように精度の高い計算に対しても非常に有効であることがわかった。
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