研究課題/領域番号 |
04453017
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
茅 幸二 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10004425)
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研究分担者 |
中嶋 敦 慶應義塾大学, 理工学部, 助手 (30217715)
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キーワード | クラスター / 水素結合 / 電子スペクトル / 多光子イオン化分光法 / 質量分析 / 液体ビーム / 負イオンクラスター |
研究概要 |
昨年度は、水素結合クラスター生成、検出用の液体ビーム、分子線装置を試作したが、いくつかの問題点があり、大きなクラスターを得るには至らなかった。本年度の当初は、この装置を用いて、シアノベンゼン、ジシアノベンゼンの、2・3量体、および水との錯体の質量選別した多光子イオン化スペクトルの測定を試みた。上記の分子は、電子受容体として重要であるが、いずれもイオン化エネルギーが大きく、その錯体の同定に質量分析法を適用するには困難があった。本研究では、波長の異なった励起用とイオン化用レーザーの2つを用いた多光子イオン化分光法によって、上記2つの分子の会合体と水との錯体の電子スペクトル測定に成功した。また、液体ビームノズルを試作し、真空中に放出させつつ、質量選別多光子イオン化法でスペクトル測定を行った。まず揮発性のメチルベンゼン、ベンゼンの液体ビームでは、ビームの近傍にレーザー光を照射して単量体、多量体のスペクトルが得られた。メチルベンゼンで見積るとその温度(回転温度)は数十ケルビンであり、室温の液体からその周囲に断熱膨張が起こっている事が確かめられた。液体ビーム自体を励起して得られたスペクトルはブロードでしかもレーザー光を強力に入射したはじめて得られるもので、液体中に高密度で発生した分子イオンがクーロン力によって液体外に飛び出したものを観測している事が結論された。現在この液体を霧状にする部分を試作している。もう一つの試みとして、分子をパルスノズルから断熱膨張的に噴出し、そこに低速電子線を照射して陰イオンを検出したところ、いままで正イオンでは検出できなかった7-アザインドールの多量体(会合数3以上)、フェノール・水の錯体(フェノールの会合数5以上)が容易に生成する事がわかった。現在光電子分光法によってこれらのクラスターの電子スペクトルを観測する事を試みている。
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