研究概要 |
1.化合物Iの合成とその光異性化による〔1.1〕パラシクロファンIIの生成。Iの置換体(R=CO_2CH_3)を既知化合物より11段階の反応によって合成した。そのガラス状溶液への77Kでの光照射による吸収スペクトルの変化およびー60℃での異性化のNMRによる追跡によってIは先ずIIに開環異性化し,さらに渡環々化付加を行ってp,p-ベンゼン二量体構造をもつIIIに異性化することを見い出し,目的とするIIの骨格の生成に初めて成功すると共に,ベンゼン骨格の光二量化によるp,p-二量体の生成という新しい知見を得た。 2.化合物IVの合成とその光反応性、我々が先に合成した化合物への一重項酸素の対加を利用した骨格変換によりIVを合成することに成功した。IVの光異性化は予期に反してVIを与えずその6員環の開裂を示唆したが,おそらくVIに異性化した後に開裂したと考えるのが合理的である。6員環の開裂を抑える対策としてIVのVへの変換等を考え,それらの合成と光反応性の検討を進めている。 3.理論計算による構造と反応性の解析。VIIとVIIIは互いに二重結合異性の関係にある興味ある化学種である。我々が実験的に得た諸特性はVIIの構造を支持しVIIIが相対的に不安定であることを示唆する。今回,理論計算による解析を行ったが力場計算,半経験的方法,6-31G^*〓3-21Gまでのレベルの非経験的方法のいずれも実験結果と異りVIIよりVIIIが安定であることを示す。摂動を含む更に高レベルの非経験的方法による計算とその結果の解析を進めている。
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