研究概要 |
1.〔1.1〕パラシクロファンの合成と理論計算によるその構造とエネルギーの解析。昨年度、置換体(R=CO_2CH_3)についてビスDewarベンゼン誘導体1bの光異性化による〔1.1〕パラシクロファン2bの生成を初めて確認することに成功したが、さらに無置換体1aを合成し、その光異性化による2aの生成を行ってその性質に検討を加えた。理論計算による構造解析は、橋頭位炭素原子間の距離が2.3-2.4A^^Oと極めて短いことを示し2の二つのベンゼン環の間に顕著な渡環相互作用の存在することを示唆した。その検証は今後の課題である。さらに2のジカチオン種ではパイ結合電子間の反発の減少によって橋頭炭素原子間距離が非結合原子間距離としては異例の2.05A^^Oに短縮し、かつ非局在化安定化した化学種となることが示唆された。その生成を継続課題として研究を続行している。 2.官能基化した四炭素架橋Dewarベンゼンの光反応性の解析。架橋Dewarベンゼンと〔4〕パラシクロファンとの間の可逆的光異性化が、光によって駆動するスイッチの分子デバイスのモデルとなりうる点に着目し、側鎖に電子求引性基をもつ誘導体の合成を行ってその光反応性と分光学的性質に検討を加えた。その結果、3bと4aは光照射によって長波長領域に吸収をもつ5bおよび6aに可逆的に異性化することを見い出した。一方、3aと4bの光反応性は3b,4aのそれと著しく異なり、〔4〕パラシクロファン骨格への異性化を行う様子は認められなかった。これらの化合物の光反応性における差異の解析も今後の課題である。
|