研究概要 |
α-ブロモアミノエステルがアリルスズと反応することはよく知られているが,我々はこの反応がルイス酸により促進されることを見い出した。すなわちルイス酸が存在しない場合,-78℃で1はアリルスズとは全く反応せず,室温まで上げることにより初めて反応は進行したが,それでも収率,不斉収率共に低かった。ところが,ZnCl_2・OEt_2を添加したところ,-78℃で反応は進行し,しかも収率85%,不斉収率70%deと,共に良い結果が得られた。また反応初期の段階で反応を停止すると不斉収率が86%deにまで向上した。この反応系内にラジカル停止剤であるGarvinoxylを加えると,ルイス酸存在化でも反応が全く進行しなくなることから,ルイス酸はキレート剤としてだけでなく,低温条件下での効率的なラジカル開始剤として働いていることが明らかとなった。 これまで述べてきたN上に電子吸引基を有するアシルイミニウムイオンは,一部の構造化学的な観点からの特殊な系を除くと,はっきりとした構造を検証した例がなかった。我々は合成応用に直接結び付けられる系において,イミニウムイオンをNMRで観察することに成功した。NOE等の測定により4からはE体5が,6からはZ体7が立体特異的に生成していることがわかった。
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