研究概要 |
(1R,2R,3S,4S)-3-[(1-(メチル-2-ピロリル)メチルアミノ]-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2ーオールを不斉リガンドに用いて、これにメチルリチウム、ヨウ化銅(I)、ついでメチルリチウムを反応させて新規な不斉有機銅錯体を調製した。この不斉有機銅錯体を用いて(E)-2ーシクロペンタデセノンとの共役付加反応を行ない、天然型(R)ームスコンの不斉合成に世界で初めて成功した。不斉有機銅錯体の構造を明かにするため、(E)-2ーシクロペンタデセノン:不斉リガンド:メチルリチウム:ヨウ化銅(I):メチルリチウムの量比を変化させ、得られる(R)ームスコンの化学収率と鏡像体過剰率との関係を詳細に検討した。その結果、上記の比が1:1:1:1:1の時には、(R)ームスコンの化学収率は8%で、鏡像体過剰率は40%であったが、1:1:1:1:2の比にすると、収率は80%、鏡像体過剰率は91%と向上することがわかった。さらに、1:2:2:1:2の比を用いると、(R)ームスコンの収率は93%、鏡像体過剰率は100%となることがわかった。 即ち、不斉リガンド、メチルリチウム、ヨウ化銅(I)から得られる銅錯体に、1等量のメチルリチウムを作用させて生成するヘテロモノメチル銅錯体は、(E)-2ーシクロペンタデセノンに対して低いエナンチオ選択性を示したが、このヘテロモノメチル銅錯体に、さらに1等量のメチルリチウムを反応させて生成するヘテロジメチル銅錯体が、極めて高いエナンチオ選択性を示すことが明かになった。 このように、不斉有機銅錯体のエナンチオ面選択的共役付加反応を利用することによって、今までブラックボックスとされていた溶液中での有機銅錯体の構造と反応性を解明することに成功した。
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