研究概要 |
シングル及びダブルアームドクラウンエーテルが銀イオンに対して選択的かつ特異的な挙動を示すことに注目し,適切なスペーサーにモノアザ18-クラウン-6及びモノアザ15-クラウン-5を導入するために高圧S_NAr反応を利用して新規ビス及びトリスクラウンエーテル類の合成を行なった。合成した化合物について種々の金属イオンに対する挙動を液膜イオン輸送実験によって検討したところスペーサー部にトリフルオロメチルピリジン、トリフルオロメチルピリジンとピペラジン、及びトリフルオロメチルピリジンとホモピペラジンとを有するビス[18-クラウン-6]化合物においては、銀イオンに対してダブルアームドクラウンエーテルに匹敵する輸送能を示すことが明らかになった。一方、環状ポリアミン化合物は分子空孔におけるカチオンへの配位能によって遷移金属イオンと安定な錯体を形成することから,医療,薬学,分析など多方面への応用が期待されている.そこで、ピペラジン、ホモピペラジン、1,5,9-トリアザシクロドデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、及び1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカンなどの窒素原子に2-ピリジル基、2-チアゾリル基及び2-ベンゾオキサゾリル基を導入した新規環状ポリアミンを合成し、イオン抽出実験及び液膜イオン輸送実験のよってそれらの重金属イオンに体する挙動を検討した。興味あることに、1,4,8,11-テトラキス(2-ピリジル)-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカンは水銀イオンに対して高い抽出能を示した。さらに高度な分子の組み合わせや、アジリジンやインドリジンなどの複素環化合物を用いる分子設計も現在検討中である。
|