研究概要 |
伝導性および強磁性という相反する2つの性質をあわせ持つ可能性のある化合物を合成する目的で、ベンゼン環の1,3位および1,3,5位にドナーを導入した共役系を合成し、そのジカチオンジラジカルおよびトリカチオントリラジカルを調製して伝導性および強磁性的相互作用を調べた。ドナーとしてテトラチアフルバレンを導入した系の合成は、テトラチアフルバレンの有機スズ誘導体とハロベンゼンのパラジウム触媒クロスカップリングを用いて効果的に行った。この系のジカチオンジラジカル塩およびトリカチオントリラジカル塩は、半導体程度の伝導性を示したが、強磁性相互作用に関してはほとんど認められなかった。ドナーとしてフェロセンを用いた系の合成は、フェロセンの有機亜鉛誘導体とハロベンゼンのパラジウムまたはニッケル触媒クロスカップリングによって行った。この反応は一段階で比較的収率良く生成物を与えた。フェロセンを置換基として持った芳香族化合物のジカチオンジラジカル塩およびトリカチオントリラジカル塩の調製はドナー化合物とアクセプターを1対2または1対3の比で混合することによって行った。得られたラジカル塩はフェロセンの鉄-鉄間に若干の強磁性相互作用を示したが、伝導度測定の結果はこれらが絶縁体であることを示した。
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