研究概要 |
I.メタラジチオレン環を有する化合物として(h^5-シクロペンタジエニル)(1、2-置換-1、2-エチレンジチオラト)コバルト(III)錯体(1)あるいはその複核型錯体(2)を用いて、下記の3点につき検討を行い、II-1^〜4に要約した結果を得た。 1)錯体1の電子授受反応性電気化学的手法による検討とESRスペクトルによる1電子還元体の捕捉)、 2)錯体2の電子授受反応性電気化学的手法による検討)と分子内金属間相互作用、 3)錯体1の付加反応性(酸化電位の低い歪み化合物を用いた付加体の捕捉と構造決定) II. II-1錯体1の酸化還元電位を測定し、これらの電位に及ぼす置換基効果を検討した結果、錯体1の酸化還元電位は置換基定数(σ_F)と直線関係にあること、Cp環の^1HNMR^<13>CNMRのケミカルシフトと還元電位とは直線関係にあること、置換基の電子的効果は置換基がCp環上にある場合のほうがジチオレン環上にある場合よりも大きくあらわれる。 II-2錯体1の1電子還元体のESRスペクトルはCoの核スピン(I=7/2)により8本に分裂したシグナルを与える。そのg値は置換基の種類によらず、金属上に電子が局在しているラジカルであると判断される。 II-3錯体2は1電子還元の際、パイ電子系を通した電子相互作用により、混合原子価状態が安定化されること判かった。この状態の安定化には、分子が最適な立体配座をとり得るか否かが大きな要因であり、置換基の立体的影響が大きい。 II-4メタラジチオレン環への付加反応は、ジアゾメタンやアジド化合物では1、3-双極子付加がおこるが、歪み化合物でありかつ酸化電位の低いクワドリシクランに対しては、電子移動により開始される2段階反応によって1:1付加体を生成することが解った。この1:1付加体は光照射によってCo-C,S-C結合が切断され、元の錯体とクワドリシクランの原子価異性体であるノルボルナジエンを与えることが判った。
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