昨年度に引き続き共生藻ゾーザンテラの大量培養を行い、材料を抽出精製して、ZTを確保した。得られた化合物ZT-Aを使って、600MHzNMRによる構造解析を行ったところ、溶媒ならびに温度を変化することによって、今まで不明であった概20%の部分構造に関する情報が得られてきた。昨年度明らかにした分解反応生成物の構造を繋ぐことによって、世界で最も大きな62員環ラクトンを含む特異な構造を推定し、この推定構造式に基づいてさらに分解反応を行ったところ、推定構造を支持する結果が得られた。また、推定されたアミド結合については、加水分解によってアミノ基が遊離すること、ならびに元素分析によって窒素原子が確認されたことによて証明された。以上の結果から、ZT-Aが既存の海産天然物とは異なる極めてユニークな化合物であることが明らかになった。また、薬理活性試験を調べてもらった結果、やはり既存の化合物には見られない特異な作用を示すことが判明した。 昨年度確立したアプリシアトキシンスピロアセタール部分構造の構築方法によってモデル化合物を合成し、さらにマクロラクトンへと誘導した。この化合物の保護基を除去することによって、当初予定したモデル化合物の合成を完了した。 共生藻の研究と対比して行った浮遊性渦鞭毛藻ゴニオラックスの研究から、発光基質のD環部の絶対配置を決定する方法を見出した。またメチオニンを投与した際に増加、蓄積する新規物質ゴニオールを単離、構造決定を行い、一部生合成に関する知見を得た。
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