本年唐は2'リン酸基をもつアンチセンスRNAの合成のために必要な有機合成反応の開拓とその確立を目指し、以下の成果をあげることができた。 まず、3'、5'糖水酸基が環状シリル基で保護された種類のリボヌクレオシド誘導体の2'糖水酸基のリン酸化反応を検討する。リン酸化後の脱シリル化反応をさせる際、2'位リン基が隣接する3'糖水酸基に転移しないように、立体的に嵩高い保護基をもつリン酸化剤を種々検討したところ、ビス(2-シアノ-1、1-ジメチルエトキシキシ)ジエチルアミノホスフインが最も優れていることがわかった。この試薬を用いて一旦3価の状態でリン酸を導入し、その後酸化することにより2'位にリン酸基をもつ化合物を得た。2'リン酸基の転移が起こらないように、2'位にリン酸基をもつ化合物の環状シリル基を除去するため、弱酸性系の脱シリル化反応の条件を種々検討したところ、HF・Pyで脱シリル化反応をおこなったところ、完全に転移を阻止することができた。次に、脱シリル化された2'リン酸基をもつヌクシオシド誘導体の5'糖水酸基にジメトキシトリチル化を行ない、最後にアミダイト試薬を反応させ合成ユニットを大量に合成し、固相法により2'リン酸基をもつ保護されたRNAの2、4、6、8、及び10量体を合成することができた。合成された2'リン酸基をもつ保護されたRNAオリゴマーは酸、アルカリ、スプリーンホスホジエステラーゼなどの加水分解酵素に対してきわめて安定であることがわかった。合成された2'リン酸基をもつRNAのオリゴマーのコンホメッション解析を500MHzNMRおよびCDによりおこなったところ、2'リン酸基をもつウリジル酸10量体は極めて強い自己会合体を形成する得意な性質をもつことがわかった。現在、化学合成した2'リン酸基をもつRNAのオリゴマーのアンチセンスRNAとしてのmRNAに対する結合能力を測定中である。
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