近年・大気中のフロンやメタンなど微量気体成分の濃度増加が成層圏オゾン層破壊や地球温暖化など地球環境に大きな影響を及ぼすことが明らかにされ、国際的に生産消費が規制される特定フロン(CFC)に代わる代替フロン(HCFC)の開発が進んでいる。今後代替フロンへの切替えに伴ってそれらの大気中濃度が急速に増加することが予想され、それらの環境への影響を評価することが急務となっている。そのためには大気中濃度の分布や変動の精密測定から、大気中におけるこれら化合物の挙動や寿命を明らかにすることが重要である。しかしこれら化合物の大気中濃度の分析は特定フロンやメタンよりさらに困難であり、世界的にもまだ確立されていない。本研究では従来の方法では検出困難なこれら代替フロン(HFCやHCFC)などを検出・測定する高感度精密分析法を開発・確立し、それらの大気中での挙動を解明することを目的とする。 バックグラウンド濃度大気試料の取扱いには、当初予定していた現有の真空ラインでは不十分であることが明らかになったので、本年度は先ず超清浄な全金属製真空ラインを設計・製作し、大気試料取扱いと低温濃縮試料導入法について検討した。さらに高感度検出器として四重極型質量分析器を備えたガスクロマトグラフ質量分析計(QP5000)を購入し、代替フロンの質量スペクトルの測定など、基本的条件の測定を開始した。現在、超微量成分を検出・定量するために装置を改造して真空ラインと結合し、調整を行っている。今後、操作条件を検討して代替フロンなどの超高感度検出・精密分析を可能にするとともに、北海道の納沙布岬や稚内周辺で採取して得られる北半球中緯度を代表するバックグラウンド大気中の濃度を精密測定し、大気中における挙動を解析する予定である。
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