本研究は、イオンが関与する反応や平衡に対する溶媒の効果を定量的に評価し、最適な溶媒の選択を可能にするために、イオン溶媒和の電気化学センサーを開発すると共に、それを実際に応用することを目的とするものである。平成4年度には次の研究を行った。 1)新しく開発した非水溶液用のpH感応型電界効果トランジスター(ISFET)及び酸化イリジウムpH電極と、市販のpH用ガラス電極について、水素イオンの溶媒和エネルギーに対する応答性を検討した結果、これらの何れもが熱力学的に応答し、水素イオンの溶媒和エネルギーのセンサーとして利用できることを見いだした。また、このセンサーの応用として、水から各種溶媒への水素イオンの移行活量係数の決定、及びアセトニトリル中の水素イオンとドナー性溶媒分子との遂次錯生成定数の決定を行った。 2)リチウム電池の有機電解液に用いられる炭酸プロピレン、gamma-ブチロラクトン、ジメトキシエタン等の溶媒、およびそれらの混合溶媒中のリチウムイオンの溶媒和エネルギーの決定と溶存状態の研究に、一価カチオン用ガラス電極を溶媒和のセンサーとして使用し、良好な結果を得た。 3)イオンの溶媒和の研究において問題となる異種溶媒間の液間電位差について、種々の基礎的研究を行った。その結果、液間電位差を構成する3成分をそれぞれ別々に見積る液間電位差の新しい見積り方(三成分法)を提案することができた。また、三成分法と従来からの液間電位差の見積り法との詳細な比較検討を行った。 4)分担者の中村は、フタロシアニンのコバルト及びバナジル錯体を結合させた有機高分子膜電極が非水溶媒中のフッ化物イオン及びシアン化物イオンにネルンスト応答することを見出し、溶媒和の研究に応用した。
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