研究概要 |
カフェインの白金錯体の合成を行った。原料としてcis-[Pt(L)(NO_3)_2](L=2NH_3,エチレンジアミン(en),)を用い、2当量以上のカフェイン(cfn)と反応させると、同一の白金原子にcfsが2分子配位した嵩高い錯体cis-[Pt(L)(cfs)_2](NO_3)_2・nH_2O(nはLにより異なる)が単離された。2分子の配位は元素分析、^1H,^<13>C NMRの測定により支持された。単離した錯体のうち比較的結晶性の良いと思われるcis-[Pt(en)(cfs)_2](NO_3)_2・1-2H_2Oを選び、単結晶X線構造解析を試みた。精度の良い結果は得られなかったが、カフェイン二分子の配位は定性的に確証できた。今後陰イオンのNO_3^-をBF_4^-やPF_6^-に変えるなどして結晶性のより良いカフェイン錯体を合成し、精度の高い構造解析により他の核酸塩基錯体との比較を行う予定である。 シスプラチン類縁錯体として水溶性ホスフィン錯体の開拓を行った。cis-[Pt(PMe_3)_2(NO_3)_2]の水溶液をOH型陰イオン交換樹脂に通し、水溶液を濃縮するとジヒドロキソ錯体cis-[Pt(PMe_3)_2(OH)_2]・nH_2O(n=1-2)が白色粉末として得られる。溶媒条件や温度などによりこの錯体は分解し、熱安定性は総じて低い。しかしこのジヒドロキソ体は余計なイオンの夾雑物が混入せず、定量的に水溶性ホスフィン錯体を合成できる出発原料となることが種々の無機酸や有機酸との反応により判明した。空気中の炭酸ガスとの反応では炭酸塩となり炭酸イオンは白金原子と4員環キレートを形成していることも判明した。これらの水溶性白金錯体は有機溶媒にも若干溶けるので有機溶媒中では逆相ミセル、水溶液ではミセルを形成しているものと考えられる。ホスフィン係ではシスプラチンと異なり三核錯体は生成しなかった。
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