研究概要 |
遷移金属錯体における金属の種類等の構造因子が錯体の反応性にどのような効果をもたらすかを解明することを目的に、かさ高い新規三脚型配位子ヒドロトリス(3、5-ジイソプロピル)ピラゾリルボレートを用いて研究を行った。しかしながら、当初から予想されていたように生成した酸素錯体は温度に対し不安定であった。そこで、既に当研究室で構造決定されている2核ヒドロキソ錯体([LCu(II)]2(OH)2,[LNi(II)]2(OH)2,[LCo(II)]2(OH)2,[LMn(II)]2(OH)2)と過酸化水素との反応によって得られた錯体の構造決定に重点を置いた。 1.[LCu(II)]2(OH)2と過酸化水素との反応によりμ-η^2:η^2-パーオキソ錯体が得られることを既に報告している。その詳細な電子構造を解明するための研究を行った。 2.[LNi(II)]2(OH)2に低温で過剰量の過酸化水素を作用させ室温まで上げると配位子であるピラゾールのイソプロピル基のメチル部が水酸化と同時に脱水素化が起こって2核ニッケル錯体が得られた。 3.[LCo(II)]2(OH)2に室温で過剰量の過酸化水素を作用させると2種類の酸素錯体が得られた。一つは配位子であるピラゾールのイソプロピル基のメチン部が水酸化された2核コバルト錯体であり、もう一つは3つのイソプロピル基のメチン部全てが水酸化され、そのうち一つが配位した単核コバルト3価錯体であった。 4.[LMn(II)]2(OH)2にピラゾール存在下過剰量の過酸化水素を作用させるとパーオキサイドイオンがサイドオン型で配位した単核マンガン3価錯体が得られた。 この他にアシルパーオキソ鉄錯体等も併せて検討した。 上記のように種々の金属による過酸化水素との反応性の違いなど多くの知見を得ることができた。
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