研究概要 |
本年度の研究は、生体系での研究とモデル系での研究に大別される。 1)生体系での研究.肝臓に有毒なLuteoskyrinについて、スピントラップ法及び直接ESR観測による研究を行った。LuteoskyrinはPenicillium Islandicumm Soppから生じる毒性のビス-ジヒドロアントラキノンである。Luteoskyrinのセミキノンラジカルについて以下の目的でESRによる研究をおこなった。(1)Luteoskyrinがミクロゾーム中NADPH-Cytochrom P-450 reductaseによってセミキノンラジカルに還元されるかどうか、(2)O_2およびOHラジカルがLuteoskyrinおよびNADPH-Cytochrome P-450 reductaseの存在下で生じるかどうか.(1)については、luteoskyrin,NADPHH,DMSOおよびNADPH-cytochrome P-450 reductaseの存在下、嫌気条件下でセミキノンラジカルが生じた。(2)についても、O_2およびOHの発生が観測された。これらの結果、Luteoskyrinの肝臓への影響は、NADPH-dependent reductaseによって触媒される1電子還元系で生じるLuteoskyrinのセミキノンラジカルの酸化で生じる活性酸素種によることが示唆される。 2)モデル系での研究.生物無機化学の分野で、Mn錯体はいくつかの生体系に対するモデル研究の対象になっている。Mnカタラーゼは生体内で生成した過酸化水素を水と酸素に分解する酵素である。我々は、Mnカラーゼの機能に関する基礎的な知見を得る目的で、酸素/窒素配位のMn錯体の溶液内構造と過酸化水素との反応について研究を行った。種々の配位子を用いた錯体でESRスペクトルの時間変化、水を加えた溶媒での酸化還元電位の測定結果などから、Mnカタラーゼにおける必要条件として、水分子の存在及び混合配位原子の存在が示唆された。
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