熟成に関するシミュレーション実験をおこなうため、タイプI、II、IIIのケロジェンを加熱し、タイプIケロジェンのビトリナイト反射率を用いて、熟成度の決めた。その加熱したケロジェンはフーリエ変換赤外分光光度計(拡散反射法)によるスペクトル解析を行ない、2930cm^<-1>(脂肪族CH_2伸縮振動)/1605cm^<-1>(C=C伸縮振動)のピーク比をY軸に、1710cm^<-1>(C=O伸縮振動)/1605cm^<-1>のピーク比をX軸にとり、IRダイアグラムの作成に成功した。このIRダイアグラムは基礎試錐「高田平野」のコア試料に適用可能で、ケロジェンのタイプと熟成度の評価において、Van Krevelenダイアグラムよりも優れている。 ついで、熟成のシミュレーション実験を行ったケロジェンから、コリナイト、テリナイト、デグラジナイトなどのビトリナイトグループとスポリナイト、不定形ケロジェンなどの各マセラルを分離し、それぞれのマセラルの特徴とともに、各熟成度の進行にともなうスペクトルの変化を検討した。この測定にあたっては、本年度購入した顕微フーリエ変換赤外分光光度計を用いた。その結果、マセラルごとの特徴的なスペクトルを明かにすることができた。熟成段階の判定については、スポリナイトと不定形ケロジェンがIRダイアグラム上で明確な熟成経路をとり、その判定が粒子の単位で可能であることが示された。しかし、ビトリナイトグループのマセラルでは、分散が大きく、粒子の単位での熟成度の判定は出来ないものの、ビトリナイト反射率1.2%以上の熟成段階で芳香族CH伸縮振動ピーク(3030cm^<-1>)が出現するという事実が見いだされた。このピークはカタジェネシス段階での油生成帯からウェットガス生成帯への変換点の識別に有効である。
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