研究概要 |
高感度偏光微分干渉顕微鏡,透過型電子顕微鏡(TEM),走査型電子顕微鏡(SEM)など当科学研究費補助金で購入した機器類をフルに使用することにより,本年度は,飛躍的に研究成果が上がった。1992年度に公表した論文の数は,21編あり,学会発表等は,10回に及んだ。公表論文のほとんどは,レフリーのある国内外雑誌であり,その半数は英文で,研究代表者の田崎が,ファーストオーサーである。そのうちChemical Geology,Claysand Clay Minerals ODPリポートは国際誌で高く評価されている雑誌である。また国際学会に多く出席し研究成果を発表した。例えば,国際地質学会,グローバルアメニティー,WRIで5編の論文を発表した。 公表論文の代表的なものを裏面にリストアップした。一つは,セメントコンクリートの微生物腐食の研究である。バクテリアがコンクリートを腐食し,その表面にジャロサイトやジプサムを生成するプロセスを追った。もう一つは,先カンブリア紀のチャート中から化石化したバクテリアを多数認めた。そのバクテリアの細胞中には,有機炭素と無機炭素が混在しており,電顕でこれらが,グラファイトに変化するプロセスを追った。EPMA,XPSで化学組成の変化もしらべた。 ODPの研究成果が上がった。伊豆・小笠原弧における熱水変質と,その鉱物の変化,化学組成の変化を,電顕を駆使してミクロンオーダで調べた。粘土鉱物や沸石の生成は,当時,熱水の循環があり,はげしい海底火山噴火を物語っている。その中で,火山性砂岩中に認められたグリーンマリーンクレーの薄片に,バクテリアが見出された他,XRD,FT-IR,ESCA,TEMにより,有機物も検出した。この結果はバクテリアの関与で,有機物質がコントロールされて,無機物を生成することを示した。
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