研究概要 |
研究代表者および分担者は、西南日本内帯に広く分布する白亜紀〜古第三紀酸性火成岩のRb-Sr年代とNd同位体比を多数報告してきた。 Kagami et al.(Contrib.Mineral.Petrol.,65,165-177)において西南日本内帯に活動した75Ma〜35Maの年代をもつ酸性火成岩は下部地殻〜上部マントルを起源としている事をSr・Nd同位体比による研究から明らかにした。この事は松江南部を中心とする地域の酸性火成岩についても例外ではない。松江南地域についてみると、75Ma〜35Maに先だって活動した90Maと年代が推測される塩基性火成岩は、εNd=+3〜+2と比較的LREEに乏しいマントルを起源としている。今回新たに採集されたほぼ同時期に活動したと思われる酸性火山岩のεNd値は+0.6(εSr=-1.3)であった。今までのデーターをみると同地域の酸性火成岩のεNd値は、75Ma〜70Maは-0.6〜-2.2、65Maは+0.6〜-2.2,40Ma〜35Maは+1.2+0.4と若い年代に活動した酸性火成岩ほど先に述べた塩基性火成岩の+3〜+2に近づく傾向にあったが、今回の新データーを加えて考えると、90MaにおいてすでにεNd値に大きな変化がある事がわかった。Kagami et al.(Proc.Japan Acad.,69,Ser.B,1-6)は松江地域の下部地殻のεNdは-3〜-1程度の値を、上部マントルの値は、+1〜0および-3程度の値である事を示した。上記酸性火成岩の値とこれら地球内部物質の値との対応関係が明らかである。今後、+3〜+2の値をもつマントルと+1〜0および-3マントルとのマントル内における位置関係を明らかにする必要がある。
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