まず、水素濃淡電池型センサーに使用するCaZrO_3系プロトン導電体についてその水素溶解度、全電気電導度、電子電導度の測定を行い、プロトン電導領域を明かにした。その結果CaZrO_3(+In_2O_3)は従来のSrCeO_3(+Yb_2O_3)と比べて、高温までかなり広いプロトン電導領域を持つことを確認した。ついで、溶融アルミニウム用の水素センサーを試作し、その能力を検討した。その結果溶融アルミニウムと平衡するガス相の水素分圧を測定する型のセンサーで、アルミニウム中の水素ポテンシャルを正確に検知することが可能であることを確認した。次に、溶融銅用の水素センサーの開発を試みた。溶融銅の場合には直接溶融銅に浸漬する型のセンサーで測定が可能であるが、温度の高いことから、正孔電導が生じて、プロトン輸率が小さくなり、正しい水素ポテンシャルを測定するためには、酸素ポテンシャルの同時測定が必要となることが解った。さらに、溶融亜鉛のような融点の低い金属についても同じような形のセンサーで溶融水素のセンシングが可能であることを確認した。また、センサーで得られた水素ポテンシャルから水素濃度を知るためには、溶融金属中の水素の活量係数が必要になるが、そのために、同じようなセンサーを用いて簡単に活量係数を評価する方法(改良型ジーベルツ法)を開発した。 以上の結果、当初に予定していた計画の全てを成功裡に完了させることができた。現在、さらに、広い温度範囲について、このような測定を可能とし、測定精度を高めるために、CaZrO_3(+In_2O_3)系プロトン導電体の電導に関するパラメータの正確な値の再測定を実施している。
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