研究概要 |
本年度は,ゾル-ゲル法によるPZT膜の厚膜化と応用する場合について極めて重要となる電極づけの研究を主体とした.一般にゾル-ゲル法においては,コロイド溶液のゲル化と乾燥の過程を経て製膜するので,乾燥の際にクラックが入り安く,厚膜化が最も難しいと言われて来た.一方,強誘電性セラミックスを圧電アクチュエータとして利用する場合には,適当な低周波側の周波数を選択するためには,ある程度の膜厚を得なければならない.そこで本研究では,まず,コーティング回数を繰り返すことによって厚膜化を試みた.具体的な実験項目は,(1)良質なコロイド溶液の調製,(2)焼成過程の短縮化である.(1)については,グローブボックス中の水分を極力排除して,ジルコニムとチタニアの金属アルコキシドと酢酸鉛をプロピルアルコールに溶解した.この場合,加水分解のために添加する水の量を厳密にコントロールすることによって,数カ月経過しても安定に存在するコーティング溶液を作製することができた.このコーティング溶液を用いて,焼成温度600℃の繰り返しコーティングを行ったところ,少なくとも10μmの膜厚まではクラックの全く見られない厚膜をMgO基板上に作製することが可能となった.一方,実用化において重要な電極へのコーティングとしては,機械的,耐食的性質に優れたステンレス鋼を基板材料として実験を行った結果,600℃の焼成においてペロブスカイト相が作製できることが確認された.また,ステンレス鋼の高温耐酸化性を確保して基板材料としていっそう有効なものとするために,PZTおよびステンレス鋼となじみ安いジルコニアを下部コーティング相として用いたところ,ジルコニア膜は60nm程度の薄膜であるにも関わらず,900℃の高温でも耐酸化性に優れ,また,絶縁破壊電圧も十分なことが確認され,PZT基板として有効であることがわかった.
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