ビスマス層状構造化合物は、ビスマス層と擬ペロブスカイトブロックが積層された結晶構造を持つ。本研究は、ビスマス層部で生じる誘電・圧電性を残したままペロブスカイトブロックを原子価制御・焼成雰囲気制御により半導体化することにより、方向により誘電・圧電性および半導性という異なる電気物性を示す材料を設計、開発することを目的とする。平成4年度は、添加物による半導性の付与および結晶配向性のある多結晶体作製を主として行い、無配向多結晶体の半導体化と配向性多結晶体の作製指針が得られた。 1.半導体化条件:Bi_4Ti_3O_<12>およびBaBi_4Ti_40_<15>を対象に、半導体化剤の選択と焼成条件(温度、雰囲気)の検討を行った。その結果、SbやLaの添加では空気中およびアルゴン雰囲気中焼成でも半導体化しないが、NbをTi量の0.2〜0.6at.%添加し、アルゴン雰囲気中で1100℃〜1150℃で焼成を行うと、半導体化が起こることが明らかになった。この方法により、試料の色が半導体に特徴的な青灰色から黒色に変化し、常温での比抵抗の値は、約10^<12>Ωcmから10^6〜10^4Ωcmに低下した。 2.配向性多結晶体の作製: 半導体化剤としてのNbを添加した原料粉体の仮焼成、粉砕の後、ドクターブレード法により厚膜作製、焼成を行ったが、結晶配向性に優れた試料は作成できなかった。そのため、KC1を融剤としたフラックス法により、微少な単結晶の作製を試みた。その結果、直径が1〜3μm程度、厚さが1μm程度の板状微結晶が合成された。その板状結晶と有機溶媒を用いて厚膜作製、アルゴン中での焼成を行い、厚さ約70μmの配向性多結晶厚膜が作製された。配向性は厚膜の基板に接する面で大きい現象が観察された。平成5年度は、得られた半導性配向多結晶体の電気物性評価、半導性の単結晶合成とその物性評価を行い、機能素子への展開を試みる計画である。
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