これまでに利用されてきたガラス材料の機能をさらに発展・制御したニューガラスの材料開発において、その材料を設計するための支援システムの開発が求められてきた。筆者らは、このニューガラスの材料設計のためのコンピュータ支援システムとして、酸化物ガラスの材料設計エキスパートシステムをパーソナルコンピュータ上で開発してきた。このシステムでは、所定の組成から約10種の物性値を算出する「組成→物性」システムと所望の物性値を満足する組成を推論する「物性→組成」システムの2種のシステムを組み合わせたエキスパートシステムである。本研究では、これまで開発してきたこのエキスパートシステムをさらに高性能なコンピュータとしてワークステーション上に再構築し、処理速度と操作性を向上させた。このワークステーション上では、Common LISPとKBMSを導入し、その上でこれまでのシステムを稼働できるように一部の内容を変更した。さらに、従来のシステムでは60種類の酸化物のみが対象であったが、この対象をさらに拡大するために主にフッ化物におけるこのシステムの適用性について検討した。これまで物性値の報告のあるフッ化物ガラスをガラスのデータベース(INTERGLAD)から抽出し、エキスパートシステムで用いている知識ベースにあてはめて、既存の物性値との比較を行った。この結果、フッ化物ガラスにおいても物性値の組成に対する加成性は成立ち、物性予測のシステムへの適応が十分に可能であると判断された。さらに、このシステムへの新たな推論項目の適応性についても検討した。
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