本研究は2年間にわたって行う予定であり、今年度は装置の製作とシミュレーションプログラムの作制及び低圧力領域での衝撃回収実験と回収試料の評価を行った。 まず、現有の二段式軽ガス衝撃合成装置に高速化ユニット(備品費による購入品)を接続し、到達圧力領域の拡大を図った。現在のところ、秒速4km/s以下の速度でのならし運転を行うと同時に、二段式軽ガス銃の動作状態を数値計算するシミュレーションプログラムを開発し、そのパラメータ設定を行っている。また、ドップラーレーザ干渉計のアルゴンイオンレーザー発振管を交換し、光学系の改修を行って状態方程式パラメータを測定する準備を整えた。さらに、一次元平面衝撃波伝播に対するシミュレーションプログラムを開発し、種々の物質の状態方程式が実験値から得られるとともに、複雑な多層構造体中の衝撃波伝播挙動の解析が得えるようになった。また、二次元軸対称モデルによる有限差分法衝撃伝波解析の商用プログラムを導入し、超高圧力領域での衝撃回収試料構成体の衝撃破壊・変形シミュレーション結果と実験結果を比較検討し、試料構成体の最適化を行った。 一方、現有の一段式衝撃銃を用いて、天然黒鉛積層材、C_<60>フラーレン、等方性黒鉛、ガラス状炭素、カーボンブラックなど、種々の炭素材料の微細片を冷却媒体に挟み、50GPa前後の圧力で衝撃加圧した後回収し、ダイヤモンドへの転換及び黒鉛の状態変化について評価し、衝撃圧力下での種々の炭素相の安定性とダイヤモンドへの転換機構を検討した。その結果、冷却速度や冷却媒体の材質、表面状態、炭素の微細組織依存性など、ダイヤモンドへの短時間転移には極めて多くの要因が影響を及ぼし、また、ダイヤモンド安定域においても黒鉛の成長が見られるなど、新しい知見が得られた。
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