研究概要 |
岩塩型のLnS層とCdI_2型のMS_2層が積層した結晶構造をもつ化合物では両層はa軸は整合しているがb軸については3b(LnS)(] SY.apprxeq. [)5b(MS_2)の軸長の関係で非整合である。この結晶構造はイオン半径比R(M)/R(Ln)20.61である組み合せにおいてのみ化合物の生成することがわかった。M=Tiの場合には金属的な導電性を示し,Crの場合には絶縁体であった。M=VではLn=La,Ce,Pr,Ndにおいて130K以上では半導体的な導電性の温度変化を示したが,低温側では次第に金属的な導電性の温度変化を示すようになった。従来から知られている金属ー半導体転移は低温で半導体に転移するものであり,本研究で観測された相転移は全く新しいタイプのもので,高温域における格子非整合が低温で整合になる事に帰因すると考えられた。また電子ドープ型超伝導体Ln_<1.85>Ce_<0.15>CuOy(Ln=Pr,Nd,Sm,Gd)では,超伝導転移温度Tcは連続的に変化するのではなくLn=Ndの場合に最高で,含有酸素量も最大であった。イオン半径から考えるとLn=Nd〜Gdの場合にはCuO_2導電面に対してLnOホタル石型層のサイズが小さく圧縮応力を及ぼすため,脱酸素はホタル石型層のみから起こる。しかしLn=Prでは逆にホタル石型層が大きすぎて導電面からも酸素が抜けるためTcが低下したと考えられた。これらの研究から,導電面に対する積層構造の相互作用に関して新しい知見が得られた。またSrNiNをはじめ新しい複窒化物や,ゾル-ゲル法を用いて無限層超伝導体に関連した化合物も合成できた。さらに高周波スパッタ法によって,Fe-Si-N系アモルファス薄膜からの窒化鉄の析出や,AlN薄膜上へのFeNおよびBNの積層膜に関しても基礎データがそろい,次年度に研究成果をとりまとめる下地が十分にできた。
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