研究概要 |
本研究課題における平成4年度の実験に基づく研究成果は以下のようにまとめられる。 1.試料出発粉体の調製:5Ωcm程度の室温抵抗率と10^4倍以上の抵抗率ジャンプ(PTCR効果の大きさ)を与える材料組成を持つ出発粉体を通常の固相反応法により調製した。また,更に精密な調製法を適用することにより,3Ωcm程度の室温抵抗率と10^2倍のPTCR効果を与える粉体の作製に成功した。この試料の特性解析より,室温抵抗率は粒界部の抵抗によって決定されており,低抵抗化には粒界抵抗率を上昇させている極く微量の特定元素の除去が不可欠であることが判明した。この知見を基に,更に高純度の試薬を用いた結晶核導入ゾルゲル法による新しい出発粉体の作製を進めている。 2.予備焼結試料の調製:本研究の主体をなす結晶粒界形成の直接観察を行うための試料をドクタブレード法によって得た厚膜の予備焼成によって調製した。加熱顕微鏡装置内での粒成長及び粒界形成実験を現在行っている。既に,厚膜の通常焼結によって粒径50〜100μmの粒子から成る試料のPTCR特性は測定しており,粒界1枚当りの電気的特性の評価に関する予備的実験結果を得ている。加熱装置内の雰囲気とマッフル炉中で行う通常焼結の雰囲気が異なっているため,より詳細な粒成長条件の決定を現在行っている。 3.試料接合部の組織解析:本実験の予備実験として,厚膜本体及びゾルゲル法を用いた方法による室温合成BaTiO_3結晶ゲルの形態観察を行った。観察は透過型電子顕微鏡(TEM)により行い,通常のBaTiO_3結晶粒では明確な双晶パターンを確認し,結晶ゲルについては明確な結晶性ハビットを持つ約20nmの粒子であることを見い出した。
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