研究概要 |
ルテニウム3核クラスター錯体Ru_3(CO)_<12>は,シクロオクタン中で還流加熱(151℃)すると,配位子6個分の一酸化炭素を放出したのち脱水素活性を示し,24hで6.9ターン分の水素と対応量のシクロオクテンを生成した。金属クラスター錯体による,熱的アルカン脱水素触媒作用の最初の報告例である。その配位構造の詳細は未だ明らかでないが、本錯体のシクロヘキサン溶液に活性炭を懸濁させて還流加熱(81.7℃)すると6個分のカルボニル配位子が脱離し、それの拡散反射型FTIRによる振動スペクトル解析を行い,エクアトリアル位カルボニル配位子6個が一つのルテニウム原子に2個ずつゼミナル配置で残存することを明らかにした。乾固させた炭素担持ルテニウムクラスター触媒は,カルボニル配位子を保持しながらも24hで13.6ターンのシクロオクタン脱水素触媒活性を与え、市販炭素担持ルテニウム触媒の活性(24hで3.0ターン)を遥かに凌駕するものであった。 白金15核クラスター錯体Cs_2[Pt_3(CO)_6]_5は,テトラヒドロフラン溶液にして活性炭に浸漬し,180℃で加熱脱気すると,すべてのカルボニル配位子を失うと同時にシクロオクタン脱水素活性を発現した。白金当りの活性は,別に塩化白金酸カリウム水溶液含浸・還元処理によって調製した炭素担持白金触媒,ならびに市販炭素担持白金触媒とほぼ同じ(24hで15ターン)であった。透過型電子顕微鏡観察(25万倍)から,それぞれ粒径分布は鋭く,空間的にも良く分散し,平均粒径はクラスター前駆体が1.4nm,塩化物前駆体が2.4nmと求められた。興味深いことにエチルシクロヘキサンに懸濁し,還流加熱(132℃)して脱水素活性を調べると,粒径の小さいクラスター前駆体の白金触媒が24hで9.4ターンなのに,粒径の大きい白金触媒は53.5ターン分のエチルベンゼンを与えた。脱水素芳香族化活性には,大きなアンサンブルが必要と思われる。
|