酸素・水素電池反応を利用して、酸素分子を還元的に活性化して発生させた活性酸素を用いてベンゼンを一段で酸化してフェノールを合成できる反応プロセスの開発を試みた。本反応システムは酸素分子を効率良く活性化できるカソードの開発が重要である。そこで、フェノール合成に有効なカソードの探索を行った。種々の炭素材料(カーボンウイスカー、カーボンブラック、活性炭、グラファイト)を用いてカソードを作製した。いずれのカソードも、活性化処理を施さないと極めて反応活性が低かった。しかし、これらの炭素材料を希硝酸で表面酸化処理を施して活性化すると、フェノール合成反応に対して高い反応活性が発現することを見いだした。活性化処理を施した種々の炭素材料の中で特に、カーボンウイスカーが高活性であった。さらに高活性なカソードを開発するために、様々な添加物(パラジウム、白金、ロジウム、酸化鉄、酸化銅など)を添加し、フェノール合成反応を実施した。その結果、カーボンウィスカーにパラジウム黒と酸化鉄を添加して作製したカソード、およびカーボンウイスカーに銅化合物を添加して作製したカソードが特に反応活性が高く、フェノール生成量が2倍以上に増加した。これらのカソードを用いてフェノール合成反応の最適条件の検討を行った結果、 1)フェノール収量、電気量ともに酸素圧に1次で依存し、 2)電解質は1モル/リットルのリン酸水溶液が最もフェノール合成に適している事が判った。前述した2種類のカソードの内、前者は0.3ボルト電圧を印加した時に、後者は回路中に抵抗を置いた(0.3ボルトの電圧降下)時に最大フェノール生成速度を与えた。活性酸素種について検討を行ったところ、両カソードともヒドロキシラジカルであることが判った。
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