研究概要 |
前年度、酸素水素電池反応を利用して酸素分子を環元的に活性化し、活性酸素を発生させ、ベンゼンを酸化して一段でフェノールに変換することに成功した。本年度は、この反応系をトルエンの部分酸化反応に適用し、クレゾール、あるいはベンズアルデヒドを選択的に生成する電極および反応条件の検討を行った。ベンゼンの水酸化反応に活性であった各種炭素電極(カーボンウィスカー、カーボンブラック、活性炭、グラファイト)を用いて、トルエンの部分酸化反応を実施したところ、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、そして、o,m,p-クレゾールが生成した。反応活性の序列は、カーボンブラック≧カーボンウィスカー>>活性炭>グラファイトであった。カーボンブラックと活性炭はクレゾールの選択性が高く、カーボンウィスカーとグラファイトはベンズアルデヒドの選択性が高かった。隔膜中のリン酸水溶液の濃度を濃くすると、ベンズアルデヒドの選択性が高くなり(95%)、薄くするとクレゾールの選択性が高くなった(90%)。また、FeCl_3炭素電極に添加することによりクレゾールの選択性が高くなり、特に活性炭に添加するとクレゾール選択率が97%に向上した。また、カーボンウィスカーと活性炭を物理混合すると顕著な協奏効果が発現することが解った。活性炭に15%のカーボンウィスカーを混合するとクレゾールの選択性を高く保ったまま、反応活性が4倍に増加した。さらに、50%とすると反応活性は活性炭単独の場合の6倍、カーボンウィスカー単独の場合の2倍に増加した。これら、トルエン酸化反応の特異的な反応挙動について検討を行った結果、ヒドロキシラジカルを活性酸素としたフェントン反応類似の機構により反応が進行し、炭素電極表面にある各種官能基の触媒作用により生成物の選択性が決定されることが解った。
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