研究概要 |
酸素・水素電池反応を利用し、酸素分子を還元的に活性化して活性酸素を発生させ、ベンゼンを酸化して一段でフェノールに変換することに成功した。本反応システムは、酸素分子を効率よく活性化できるカソードの開発が重要である。フェノール合成に有効な電極の探索を行った結果、熱硝酸で酸化処理を施した各種炭素電極が有効であることを見いだした。反応活性の序列は、カーボンウィスカー≧カーボンブラック>>活性炭>グラファイトであった。この炭素材料に種々の添加物を添加したところ、カーボンウィスカーにパラジウムと酸化鉄を添加した電極、および硫酸銅を添加した電極が高活性であった。特に、後者の電極は0.3Vの電圧を発生させたときにフェノール収量も最大となり、電力/フェノール・コジェネレーションが可能であることが解った。本反応システムをトルエンの部分酸化反応に適用し実施したところ、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、そして、o,m,p-クレゾールが生成した。生成物の選択性は炭素材料により大きく異なり、カーボンブラックと活性炭はクレゾールの選択性が高く、カーボンウィスカーとグラファイトはベンズアルデヒドの選択性が高かった。隔膜中のリン酸水浴液の濃度を濃くすると、ベンズアルデヒドの選択性が高くなり(95%)、薄くするとクレゾールの選択性が高くなった(90%)。また、カーボンウィスカーと活性炭を物理混合すると、顕著な協奏効果が発現することが解った。両者を1対1で混合すると、反応活性は活性炭単独の場合の6倍、カーボンウィスカー単独の場合の2倍に増加した。これら、ベンゼン、トルエン酸化反応の特異的な反応挙動について検討を行った結果、ヒドロキシラジカルを活性酸素としたフェントン反応類似の機構により反応が進行し、炭素電極表面にある各種官能基の触媒作用により生成物の選択性が決定されることが解った。
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