研究概要 |
1.アルキルビオロゲン類は水銀電極表面上に自己集合により安定な単分子層の分子集合体薄膜を形成する。この単分子層薄膜のサイクリックボルタモグラムには、溶液中の種の還元電位よりも約0.2から0.3V正の電位に一対の鋭いスパイク状の波が現れる。この波が吸着ビオロゲン種のジカチオンとカチオンラジカルとの間のレドックス反応に起因することが、水銀めっきした白金電極-溶液界面に形成された分子集合体層のin situでの分光電気化学測定(紫外可視反射スペクトル及び赤外反射スペクトル)の結果確かめられた。 2.この分子集合体薄膜はそのスパイク状の波の前後で電極電位をわずか30mV変化させるだけで、可逆的に酸化状態が変化し、溶液内化学種の電極反応に対して、その進行・停止を制御するスイッチング機能をもつが、偏光を用いた赤外反射スペクトル測定の結果から、カチオンラジカル状態では求引的分子間相互作用が強くなり、また分子長軸が電極面に対し垂直になった立った状態で吸着していると結論され、このため、溶液内化学種の電極反応が阻害されると推論された。 3.溶液内に存在する4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシの電子移動反応ばかりでなく、Pb(II)+2e(〕 SY.dblharw. 〔)Pb(Hg)やTl(I)+e(〕 SY.dblharw. 〔)Tl(Hg)の電極反応に対しても、この分子薄膜はスイッチング機能を示すことが明らかにされ、これは上記2の機構によって説明できる。しかし、薄膜が形成されてからの時間の経過と共に、Pb(II)の反応に対する阻害効果が変化することが見出され、これから、比較的短い時間内で薄膜の構造が変化していると結論された。
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