研究概要 |
窒素酸化物(NOx)は酸性雨の原因等大気汚染有害物質としてその除去が環境問題の重要課題となっている。燃焼装置から発生するNOxの低減には,これまで触媒を用いる排気ガス処理が実施されてきた。ガソリンエンジンの排ガスには三元触媒法が,大型ボイラーの排ガスにはアンモニア選択還元法が実用化されている。しかしより高い燃焼効率を得る技術として注目されている希薄燃焼方式の排ガス,例えばガスタービンやディーゼルエンジン,希薄燃焼ガソリンエンジンの排ガス中には酸素が過剰に存在するため,これまでの排ガス浄化方式では現実的に困難である。従って,新たな触媒プロセスの開発が望まれてきた。このような背景のもと本研究では酸素過剰な条件で使用可能なNO還元触媒の研究を行った。 プロピレンによるNO選択還元反応に対して高活性を示す触媒の探索を行った。ゼオライト骨格中に鉄を取り込んだ鉄シリケートが300℃という低温で本反応に対し高い活性を示すことを見い出した。また,実ガスの処理に際しては,排ガス中に含まれるSO2による触媒被毒が問題となるが,鉄シリケートはSO2の共存下でも高活性を維持し,活性の低下が起こらないことを明らかにした。 鉄シリケートは高いNO還元活性を示すが、燃焼活性も高いためNO還元の選択性は低い。そこで、選択性の向上を目的として、種々の金属カチオンで交換したゼオライトを用いてNO還元反応を行った。その結果,プロパンを還元剤に用いた場合、ガリウムイオン交換ゼオライトではNOと炭化水素との反応が極めて高選択的に進行することを見い出した。また,ガリウム以外にもインジウム及び亜鉛が比較的高い選択性を有することを示した。また,ガリウムイオン交換ゼオライトは,高いNO転化率を示す温度域が従来知られている触媒に比べて極めて広いことも明らかにした。ガリウムイオン交換ゼオライトではメタンやエタンを還元剤に用いても高いNO転化活性が得られた。ガリウムイオン交換ゼオライトでは還元剤と酸素の反応が著しく抑制され,選択的にNOを還元すること,NO還元反応の選択性はプロパン<エタン<メタンの順に増大することを明らかにした。
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