研究概要 |
食品,油脂製品をはじめ,生体分子の酸化的劣化を抑制するための新規天然抗酸化物を見出すとともに,合成抗酸化物を設計,開発することを目的として研究を進め,以下の成果を得た。 1)ビタミンEおよび関連するフェノール類の均一溶液,リノール酸メチルミセル,大豆ホスフアチジルコリンリポソーム膜中における脂質過酸化反応に対する抑制作用を詳細に検討した。特に膜における抗酸化物の挙動を,スピンラベル剤を用いることにより明らかにすることを試み,クロマノールの活性サイトが膜表面にあること,クロマノールの膜内タテ方向の動きやすさが制限されているため,ラジカルが膜内部に入るほど捕捉しにくくなることを明らかにした。 2)低比重リポタンパク質(LDL)の酸化変性は動脈硬化の発症と関連して重要であるが,LDLにあってもビタミンEが表層膜中に存在すること,そのため内部コアのラジカルを捕捉しにくいことを明らかにした。さらに,ビタミンEより化学的活性の小さいプロブコールの方がより高い抗酸化活性を有することも認めた。 3)多種多様のクロマノール,アミノフェノール,カルバゾール類の脂質過酸化抑制作用を定量的に評価した。 4)含セレン化合物であるエブセレンは,ラジカル捕促能を有しないにもかかわらず,鉄や銅イオンにより誘起される酸化,あるいは脳,肝ホモジネートの自動酸化をほぼ完全に抑制することを認めた。これが,エブセレンにグルタチオンペルオキシダーゼ活性があり,それによりヒドロペルオキシド,過酸化水素が還元的に分解されるためであることを明らかにした。
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