研究概要 |
1.アセチレン類への付加反応でβ位にトシル基を有するビニルセレン化合物を合成し(これは文献既知)、Sharplessの不斉酸化ならびにDavisの光学活性オキサジリジンを用いる酸化を行なったところ、不斉酸化が起こり、不斉ビニルセレノキシドを経由して軸不斉を有するスルホニルアレン化合物の合成に成功した。現在のところ、その最大不斉収率は42%e.e.である。Sharpless酸化剤の方がDavis酸化剤よりも有効であった。この結果については速報としては1992年にイギリスで発表したが、現在、今年度で明らかにした点をまとめて論文としてアメリカに投稿中である。 2.シンナミルフェニルセレニドをSharpless不斉酸化剤で酸化したところ、生成する不斉セレノキシドが[2,3]シグマトロピー転位を起こしたアリル位アルコールが不斉収率82%という高い値で生成することを見出した。これについては裏面記載の如くTetrahedron Letters誌に掲載が許可された。 3.4-t-ブチルシクロヘキシルニフェニルセレニドやメチルセレニド類を合成し、これらを1の項で述べたようにSharplessやDavisの不斉酸化剤で酸化したところ、軸不斉を有するシクロヘキシリデン化合物が高不斉収率で生成することを見出した。特に、Davis不斉酸化剤が有効であり、又、メチルセレニドを用いることにより92%e.e.と非常に高い不斉収率を得た。この結果については現在論文としてまとめアメリカに投稿中である。 4.1や3の項で見出した知見をもとにSharpless系の不斉酸化剤を用いスルフィドのスルホキシドへの不斉酸化を試み、特にビナフトールを不斉配位子とすることにより、この反応を触媒的に行わせることに成功した。Tetrahedron Letters誌に発表した。
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