| 研究概要 |
水-有機溶媒混合系での酵素活性の発現とその合成化学的応用を目的として研究を行い,次のような成果を得た。
1。 プロテアーゼによるペプチド合成における特異性
α-キモトリプシン,スブチリシン等のセリンプロテアーゼを触媒とするペプチド合成において,有機溶媒の性質及び水含有率により酵素の基質特異性ばかりでなく立体特異性が大きく変化する事を見いだした。この現象を利用して,D体アミノ酸を含むペプチド合成が可能である事を立証した。
2。 水-有機溶媒系での光学分割
今年度は主に安価な工業用酵素であるアルカラーゼを用いて,アミノ酸エステルの分割を行い,溶媒の性質との関係を調べた。その結果,高濃度の有機溶媒中で,酵素の立体特異性がきわめて高い事を見いだし,非天然型アミノ酸を含む各種アミノ酸の簡便な光学分割法を確立した。
3。 蛍光分光法による酵素構造の変化の検出
昨年度,α-キモトリプシンについて,広範囲の溶媒組成に対してその蛍光波長と触媒活性に相関関係を見いだした。今年度は2種類のスブチリシンに対して同様の研究を行い,やはり蛍光波長と活性の間に高い相関がある事を確認した。これらの結果を,酵素内外の極性の差と酵素構造の変化に関連して考察した。
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