研究概要 |
固相で強い発光を示す安定な有機材料は各種の光学材料として注目されているが、固相発光の機構やその分子設計の方法論はまだ確立されていない。申請者らは2,2'-ビピリジン誘導体に注目し、合成例の少ない非対称置換ビピリジンの合成法を確立し、新規な発光材料の開発と機能性光学材料としての応用を目指した。本年度の研究で得られた成果は以下の通りである。 1.前年度の研究で確立された方法に基づき、アミノおよびクロロ置換基を持つ各種対称および非対称置換ビピリジンを合成し、その発光特性を検討した結果、6位にアミノ基を持つビピリジンのみが発光を示すこと、6、6'-アミノクロロ非対称置換体がストークスシフトの大きな強い青色発光(量子収率0.8)を示すことが確認され、この発光が励起状態での二つのピリジン環での分子内電荷移動と関連することが示唆された。 2.上記非対称置換体は固相でも強い青色の発光を示し、真空蒸着により3層型EL発光素子を作製してその性能を検討した結果、弱いEL発光が認められた。 3.電子供与性および電子吸引性置換基を持つ非対称置換体が強い発光を示すことに注目し、電子供与性芳香環と電子受容性キノリン環を結合させたホスト分子を合成し、ゲスト分子との多量水素結合により環同士の回転を固定すると、ストークスシフトの大きなTICT発光が変化し、多重水素結合によるゲストの分子認識のみを特異的に検出可能な光応答性レセプターとなることが判明した(Chem.Lett.,1993、1541)。 4.アミノ置換体がプロトン性溶媒中で示す弱い長波長側の発光が、イミノ互変異体によるという前年度の成果を踏まえ、ジアミノビピリジンのアルキル誘導体を合成し、脂肪酸との多重水素結合形成に基づくイミド互変異体生成の促進とそれに基づく発光変化が起きることを確認し、脂肪酸のレセプターとなることを明らかにした(日化第66秋季年会講演予稿集、p.300,1993)。
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