研究概要 |
1.ビスシクロペンタジエニルジヒドリド錯体Cp_2MoH_2(Cp=η^5-C_5H_5)およびその誘導体の各種有機基質との反応。 (1)Cp_2MoH_2と種々のアリルアルコール類との、p-トルエンスルホン酸存在下での反応により、カチオン性のη^3-アリル錯体と、γ-ヒドロキシプロピルモリブデン誘導体が得られた。後者は塩基での処理でモリブデナオキサシクロペンタン錯体に誘導された。上記2種の生成物の選択性は、アリルアルコールの種類およびプロトン酸の種類に依存した。 (2)Cp_2MoH_2はプロトン酸共存下にアルデヒド、ケトン、およびイミン類を還元し、それぞれ相当するアルコール、アミンを与えた。ケトンの還元では、完全なジアズテレオ選択性が実現され、また、若干の不斉誘導が観察された。アニリン由来のイミンは、メタノール中でプロトン酸なしで容易に還元され、高い官能基選択性が認められた。 (3)モノメチル置換シクロペンタジエニル錯体(MeCp)_2MoH_2を合成し、上記の反応についてメチル置換基の影響を検討した。 (4)水酸基架橋複核錯体[Cp_2M(μ-OH)_2MCp_2]^<2+>(M=Mo,W)が合成され、構造解析とルイス酸に対する反応性の検討がなされた。 2.[MoH_4(dppe)_2](dppe=Ph_2PCH_2CH_2PPh_2)の各種有機基質との種々の条件下での反応および生成錯体の反応性。 (1)[MoH_4(dppe)_2]と有機アミド化合物との光照射下での反応で新規のヒドリドアミド錯体が合成された。この錯体はメタノールとの反応で反応性の高いジメトキソ錯体[MoH_2(OMe)_2(dppe)_2]に誘導された。 (2)[MoH_4(dppe)_2]とマロン酸エステル類との反応を詳細に検討し、選択的なC-C結合の切断を伴う新しい反応が見いだされた。
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