本年度の研究実施計画の第1段階(合成ブロックの反応性の研究)の研究を進めた。 含フッ素ヘテロ環合成に供する合成ブロックとして、塩化トリフルオロアセトイミドイルの新規合成法を確立した。本合成法は従来の5塩化リンを用いる方法では収率が悪く(10〜30%)、まったく合成できなかった化合物も合成でき、一般に収率も80〜90%となった。後処理も簡単であり、今後の研究の遂行に大きく寄与すものと思われる。上記の研究過程で、塩化イミドイルの生成機構を究明した。その結果、ペルフルオロアルカン酸がホスホニウム塩として活性化され、それに塩化物イオンが求核巧撃することがわかった。 この機構を一般化すると、求核剤を適切に選択することで、求核剤に対して、ペルフルオロアシル基を導入できることになる。 求核剤として、オレフィン、ナトリウムアジド、トリメチルシリルアジド等を作用させると、相当する、トリフルオロアセチルオレフィン、ペルフルオロイソニトリルが合成できた。塩化トリフルオロアセトイミドイルと親電子剤との反応を可能にするために、メタル化する必要が生じた。 そこで、相当するヨウ化物を合成する方法を確立した。 すなわち、塩化物をアセトン中、室温下、ヨウ化ナトリウムと1日反応させることで、ヨウ化物をほぼ定量的に合成した。 また、臭化物の合成も、四塩化炭素の代りに四臭化炭素を用いることでその合成に成功した。 そこで、メタル化の予備実験として、ヨウ化物に、ブチルリチウム、金属亜鉛、金属スズ、金属鉛、塩化パラジウム、パラジウム-ジベンザールアセトン錯体、銅錯体などを作用させ、その挙動を見た。 その結果、ブチルリチウムとは、-78℃で速やかに、ヨウ素ーリチウム交換が進行し、相当するリチウム化合物が、調製できることが判明したので、 今後の含フッ素ロ環合成が大きく進展するものと思われる。
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