結晶内での分子の自己組織化はすべての場合に選択的反応に好都合であるとは限らないことが判明した。しかし、分子の規則的自己組織化の際ホスト分子と共に自己組織化させると、選択的反応に極めて都合良い配列をし、選択的反応を能率良く行わせることができることを見出した。 例えば、N-ベニゾイルメチル-δ-バレロラクタム(2)と酒石酸から誘導した光学活性ホスト化合物(1)との1:1包接結晶を調整し、この結晶の粉末を水に分散させて攪拌下に光照射すると光学的にほぼ純粋な二環性δ-バレロラクタムアルコールを生成した。この包接結晶のX線構造解析結果は、2と1の分子が自己組織化を起こして、不斉認識能に優れた1:1包接結晶を形成していることを示した。この高い不斉認識能のために、2の分子内光環化反応の際、表及び裏からの2つの可能な攻撃が完全に制御されて、一方からのみの攻撃が起こって一種類の立体異性体、つまり純粋な光学活性体が生成するものである。2つの種々の誘導体についても1との自己組織化させた包接結晶を調整し、その光反応で光学的に純粋な光環化生成物を与えることを明らかにした。
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