研究概要 |
高分子鎖の並進運動と回転拡散は最も遅いモードであり、理論的にはそれぞれO次および1次のモードに対応する。本研究では、ポリイソプレンについて強制レーリー散乱法により並進拡散係数Dを測定し、誘電測定により分子全体の回転緩和時間τを測定した。また誘電緩和強度より二乗平均末端間距離〈r^2〉を計算し、τD/〈r^2〉の値を決定した。 試料のポリイソプレンはアニオン重合法で合成し、末端をメチルアゾベンゼンでラベルした。強制レーリー散乱の測定は、アルゴンレーザーの488nmの光で書き込みを行い、ヘリウムネオンレーザー光の散乱を用いて行った。誘電測定は20Hzから100kHzの範囲で行った。 単分散ポリイソプレンのDは分子量MのM^<-2.8>に比例し、管模型の予言するM^<-2.0>により強い分子量依存性を示した。ラベルしたポリイソプレンを低分子量のポリイソプレンに混合して,いわゆるトレーサー拡散係数Dtrを測定したところ,DtrはM^<-1>に比例し、Rouse理論とよく一致した。次に全く同一の条件で誘電測定を行ったところ,単分散系ではτはM^<3.8>に比例し,低分子量マトリルクス中ではM^<2.0>に比例した。管模型理論はταM^<3.0>を予言するが,τの分子量依存性はDの場合と同様に理論より強い。以上より,Dおよびτは非からみ合い系では,理論とよく合うが,からみ合い系では理論に合わないことが確められた。さらにこれらのデーターからDτ/〈r^2〉を求めた。この量はRouse理論管模型理論共に1/3π^2となると予言する。実験値は非からみ合い系ではほぼこの予想と一致したが,単分散系では,Dτ/〈r^2〉は分子量と共に減少し,1/3π^2より後1桁小さい値となった。この挙動はGraessleyの修正理論でも説明できないことが明らかとなった。
|