研究概要 |
高分子錯体(固相)では、錯体部へ酸素分子が迅速・可逆的に結合するため、酸素の高分子への溶解量は物理的なそれの数百倍に達し、酸素の過飽和溶解ともいえる現象が観測できた。固-気界面における酸素の識別収着を定量的に特徴づけるとともに、溶解酸素分子の拡散定数、表面拡散、過飽和溶解に起因する高分子の物性変化を実証した。 (1)高分子ポルフィリン錯体(固相膜)における酸素の識別吸着量(0.7〜3cm^3(STP)/g(高分子)(25℃,空気))を気体収着量測定装置を用いて測定・確認した。酸素分子の吸着はLangmuir型とHenry型の収着の和で示された。錯体の酸素結合部位近傍の空間構造により反応特性が大きく変化し、酸素の収着量と透過速度に相関した。 (2)錯体で細孔内を被覆した多孔膜で、表面に吸着した酸素分子の二元的な拡散(表面拡散)をはじめて実測した。飛躍的に高い輸送効率(透過係数>10^4Barrers,(酸素/窒素)比2)の(酸素/窒素)分離膜を実現した。酸素分子の迅速なホッピング拡散を2元モデルで解析し、酸素分子の拡散係数10^<-4>cm^2S^<-1>を算出できた。また細孔表面に錯体を高濃度に導入した界面では、酸素に特異的な表面拡散層が形成され、物理的な気体拡散を超える拡散量(Ps=10^3Barrers)として観測された。 (3)サルコミン微結晶を含有した高分子では、酸素分圧〜収着量関係が一定分圧で急峻に増大した。この特異収着は可逆的で、ヒステリシス曲線として繰り返し加速できた。分光測定や透過係数から、酸素結合にともなう結晶構造の変化が高分子マトリックスと協同的に相互作用した結果として理解できた。
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