抗原性の高い非天然アミノ酸として、光異性化能をもつフェニルアゾフェニルアラニン(azoAla)、および蛍光性のピレニルアラニン(pyrAla)を合成し、光学分割してL体を得た。これらを含むテトラペプチド、Glu-Xyz-Gly_2(Xyz=azoAla or pyrAla)を合成し、それらをウシ血清アルブミンと結合させた。これを抗原としてマウスに注射し、通常の方法でモノクローナル抗体を作製した。pyrAlaに対する抗体はピレニル基をK=5×10^<-6>(M^<-1>)で特異的に結合することが判った。ピレニル基を蛍光プローブとして、抗体の抗原結合状態について調べた結果、つぎの事が明らかになった。(1)結合部位は水溶液中と比べてはるかに疎水的であること、(2)補えられた抗原にO_2分子は自由に近づけるが、より大きな消光剤(例えばアクリルアミド)は近付き難いこと、(3)抗体はL体のアミノ酸は良く結合するが、D体は結合しないこと、(4)取り込むアミノ酸は各結合部位に1個のみであること。これらの結果は、今回作製した抗体は各種アミノ酸の混合物中からピレニル基をもつL体のアミノ酸のみを取り込む能力をもつことを示している。しかし取り込みは1個のアミノ酸に限られるため、そのままの形ではペプチド結合の生成には使えない。今後、2個以上を同時に取り込む抗体の作製が必要である。 一方、種々の抗体混合物から特定の機能を持つものを簡便にスクリーニングする新手法として、LB膜上に抗原を固定化し、その上での抗原ー抗体反応を追跡することを試みた。その結果、LB膜上でも特異的な抗原ー抗体反応が起ることを確認した。
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